吉野熊野国立公園に属する大台ヶ原は、標高1,695mの日出ヶ岳を最高峰とする山地で、年間3,500mm以上の降水量を記録する日本有数の多雨地帯です。近畿地方では数少ない亜高山帯針葉樹林のトウヒ林、太平洋型ブナ林、天然ヒノキ林等の貴重な自然環境を有しています。
しかしながら、昭和30年代の伊勢湾台風等による樹木の風倒や増加したニホンジカによる植生被害、ドライブウェイの開通による利用者の増加等の様々な要因により、トウヒ林等の森林生態系が衰退し、生物多様性の低下が生じています。
このため、環境省では、大台ヶ原の自然再生保全対策を1986年からスタートし、まずはトウヒ林の保全対策をテーマとする検討会、次にニホンジカの保護管理をテーマとする検討会を設置し、対策を進めていました。更に総合的な視点に立って森林生態系の保全再生を図るために、2002年に「大台ヶ原自然再生検討会」を設置、2005年1月に「大台ヶ原自然再生推進計画」を策定し、評価と見直しを行いながら、ニホンジカの個体数調整、防鹿柵等の植生保全対策といった自然再生のための取り組みを行っています。
KANSOテクノスは、環境省近畿地方環境事務所から「大台ヶ原自然再生に係る調査・検討業務」等を受託し、大台ヶ原自然再生推進計画等に基づき、ニホンジカの生息密度調査、植生や生物多様性の回復状況を把握するための調査等を行うとともに、有識者や環境省とともに自然再生への取り組みの評価、計画の見直しの検討を行っています。 2022年には従来の調査に加え、新技術である環境DNA解析を用いたオオダイガハラサンショウウオの生息状況調査にも取り組みました。